12月3日(火)『アドベントチャペルⅡ』
投稿日:2024.12.06
聖書箇所:『新約聖書、ルカによる福音書1章35-38節』 題:「あなたが傍らに」-魂の物語
本日は日本キリスト教団高崎教会牧師の安部勉先生をお招きしました。安部先生は、高崎教会に赴任される前は、大阪市にある淀川キリスト教病院のチャプレンをされていました。ここの病院は日本におけるホスピスや緩和ケアの発祥の病院の一つと言われています。安部先生は、滋賀県のヴォーリズ記念病院のチャプレンをされていたこともあり、終末期の患者はもちろん、その家族にも寄り添い、メンタルケアを中心にお働きになっていらしたそうです。そうした経験をもとに、聖書に記された言葉を、非常に分かりやすく解説してくださいました。
私たちが病院に行く時には、「痛さ」や「辛さ」の他に、今の自分の状況が分からない事による「怖さ」があります。こうした「怖さ」から不安や緊張を感じる患者さんは多いです。病院で治療を受けることで、「痛さ」や「辛さ」がなくなることはもちろんですが、こうした苦しみの原因が知らされ、不安材料がはっきりすれば、「怖さや緊張」は少なくなることでしょう。病院の役割のひとつとして、こうした患者の「辛さ」を理解して、「共感する」というのがあります。こうして自分の辛さを「分かってもらえた」ことで、患者の苦しみは減っていくのです。
大天使ガブリエルから、身ごもったことを伝えられたマリアは、大きな不安の中にいました。マリアは、親類のエリサベトに会いに行きます。エリサベトは、不妊の女と言われ続けていましたし、老齢でした。しかし、エリサベトもマリアと同様に、身ごもったことを天使から告げ知らされていたのです。 マリアはこの時、年齢的には13~14歳くらいだったであろうと言われています。母になるという事は、厳しく辛い現実であったろうと思います。マリアがこの辛い現実を受け入れられたのは、似た境遇であるエリサベトの存在が支えとなったからかも知れません。
私たちは、辛い立場にいて悩んでいる人と全く同じ境遇にはなれないかも知れません。しかし、隣人として辛さを理解することは、今悩んでいる人の辛さを減らすことにつながります。たとえ状況は変わらなくても、自分を理解し受け入れてくれる仲間がいることで、困難をのりこえる勇気が得られるのではないでしょうか。クリスマスとは、神様からの 「いつも一緒にいるからね」 という呼びかけをいただいている時なのです。自分のことを「分かってくれる人」との出会いは、とても大きな励ましになります。私たちは誰でも、どなたかの隣人、つまり「その人のことを分かっている人」になる事が出来るのです。
安部先生は淡々とおだやかな語り口で語ってくださいました。これから誰もが経験するであろう医療現場の事を、聖書の内容になぞらえたお話はイメージしやすく、心にすうっと染みこんできました。本日は貴重なお話しをありがとうございました。