2025年6月10日(火)「チャペル・アワー」
投稿日:2025.06.11
聖書箇所:「新約聖書、ローマの信徒への手紙、10章17節」 題:【 「聖」なる多様性 】
本日の奨励は、本学キャリアデザイン学科の専任講師である佐竹美穂先生にお願いしました。キリスト教主義学校では、「聖」の字はおなじみであり特別な存在でもあります。佐竹先生は、この文字の成り立ちやその持つ意味、読み方についてなど、様々な面から解説してくださいました。
聖書大辞典によると、旧約聖書における「聖」の字は、「清いものとか、凄いもの」のように、他のものとはやや離れたところに存在する物、のような解説がなされています。いわば、聖別された「神に属するもの」のような意味で使われているのだと考えられます。新約聖書においては、イエスは「神の聖なるしもべ」という表記が見られます。ここから考えられるのは、「属する」というよりは神に「仕える」という意味だと感じられます。
次には「聖」の文字を分解してみます。すると 耳・口・壬 の三つの文字で構成されていることが分かります。この中で 壬 は、背伸びをした人をかたどって出来ているといわれています。つまり 人が背伸びをして (神の言葉を) 耳にしたり 口にしたりしようとすることを意味していると考えられます。
では、読み方について考えてみましょう。音読みなら「セイ・ショウ」で、訓読みなら「ひじり」となります。この「ひじり」は、実は(ひ)と(しり)から成り立っています。そしてそれは、(日、火、炎)、を(知る) となります。つまり、天候や自然現象など「森羅万象を知る知恵のある人」という意味と考えられます。今の時代なら、気象予報士、占い師、医師、などが考えられるかもしれません。これらのことを重ね合わせると、「聖」の字の意味するところは、
①神に仕える ②神の声を聞くことが出来る ③人知を超えた不思議な現象を知る
といった意味があるのだと考えられるのではないでしょうか。
今日は短い時間でしたが、一つの文字「聖」を、その成立や、発音のしかた、旁(つくり)や偏(へん)の構成、文章の中でどう使われているかなどを検証してみました。今回の奨励題は【「聖」なる多様性】です。一つの文字であっても、見方によってさまざまな見え方や意味があります。そのことは、文字や文章を理解するうえで、興味が尽きることは無く、大変に深みがあるものだと思います。対話とは、音声のやり取りですが、本来はこうした文字言語のやり取りなのです。一つ一つの文字にはこのようにたくさんの意味が含まれています。そうしたことばの意味をよく考え、対話を大切にしたいと思っています。
佐竹先生はまずはじめに「文字」の研究者らしく、ご自身は「漢字」が大好きで、もはや趣味でもある!と語りました。文字には何種類かありますが、「表音文字」とは音をあらわす記号でしかありません。漢字は「表意文字」です、文字そのものが意味を持っているのです。それどころか二文字以上が組み合えば特別の意味を持つ熟語となります。また、旁(つくり)や偏(へん)に分解できますし、その部品となる部分それぞれにも意味があります。今日の奨励で、普段何気なく使っている、文字はとても複雑で、興味深い存在であることをあらためて感じる機会になりました。佐竹先生、素晴らしいお話をありがとうございました。