11月12日(火)「いのちのチャペル」

投稿日:2024.11.18  チャペル・アワー

聖書箇所:『旧約聖書、詩編23編1節b~3節』 

 本日は、「いのちのチャペル」と名づけて行いました。「群馬ダルク」さんから、2名の方をお招きしました。ダルクとは、Drug (薬物)、Addiction(病的依存)、Rehabilitation(回復)、Center(施設)の頭文字DARCを組みあわせた造語です。薬物依存症や、これに類する問題でお困りの方々が回復するための支援を実施している施設です。

 施設で働く方々の多くは、依存症患者として入所し、その後に回復をした方々です。今回お招きしたお二人も、依存症になった経験をお持ちで、克服した現在は入所者と共同生活をしながら回復の支援をなさっています。昨今、『薬物乱用防止教室』といった内容で、講演を依頼されることが多いそうです。今回の対象は、キリスト教主義の短期大学の学生です。ただ単に『危険だよ!』というだけでなく、『なぜ依存症になってしまうのか、なぜそこから抜け出しにくいのか』ということを、より心情的に語ってくださいました。

 平山晶一さんは、高校生時代に依存性のある市販薬を飲みはじめたことがキッカケでした。友人に勧められるままに気軽に試すと、強い依存は感じられません。「これなら、やめたくなったらやめれば良い」くらいに感じていました。それよりも、やめることによって仲間を無くしてしまうことが怖かったのだそうです。日を追って、薬の量は増えて行きました。学業はおろそかになり、欠席することが増えて行きます。現実の自分を直視するのが嫌になり、そうした状況から現実逃避をするために、より薬に依存するようになってしまったのだそうです。

 当然、購入費用の問題もあり、あちこちからお金を借りたり、盗んでしまったりなど犯罪に手を染めていったのだそうです。警察の世話になることもあり、保護者を悲しませることは充分に分かっていて、その時はやめようと決心するのですが、やめられないのです。精神的にも苦しくなり、自殺を考えたことも何度もあったそうです。

 福島ショーンさんは、プロスポーツ選手を志すほど運動が得意でした。学習に関しても、米国の大学に進学するほどで、いわゆる優秀な生徒だったそうです。一般に『薬物依存になる人は、目標もなく生きていて意志が弱い』などと決めつけてしまうことは多いです。しかし、そうした話しとは、正反対ともいうべき経歴をお持ちの方もいるのです。始めたキッカケは、競技力の向上や疲労回復などで、スポーツ選手として前向きと言えなくもないものだったかも知れません。しかし、結果的には薬物に依存して、志を諦め、競技を続けられなくなってしまったのでした。

 どちらの方も、そんな経験を経て「ダルク」の存在を知り、入所したのだそうです。ダルクの仲間には、回復の辛さを知る先輩も多く、向かうべき先を示してくれたり、背中を押してくれたり、側面から支援をしてくれるなど、寄り添って共に歩んでくれたそうです。薬物依存になる人が全くいなければ、こうした施設はいりません。しかし、それは理想論です。薬物依存からの回復率は40%程度と言われています。そして、依存症に悩む方々は、覚醒剤や大麻のような『麻薬』と呼ばれるものより、市販薬や、病院処方の薬やお酒、が原因のことの方が多く、身近な問題なのです。

 お二人の話からは、薬物依存になるキッカケはどこにでもあり、誰もがそうなる可能性を持っていることが感じられました。しかも現在は、ネット環境等を利用して、多くの情報が氾濫していて、誘惑も多いです。そうなったときには、断りにくい状況になることが多いです。お二人は経験者として、『誘惑やしがらみとは、あらがわずに逃げること、そして、本音をはける人を持っておいて、怖がらずに話すことが重要だ』 と語りました。今日のお話は、言うなれば自らの失敗や犯した罪を正直に告白するもので、講演者は非常に辛かったと思います。しかし、苦難を乗り越えた今、現在の歩みは、多くの苦しみをかかえた人に寄り添うものでした。これはまさに 『悔い改め』 であり、これはキリスト教的に非常に重要なテーマだと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。