5月28日(火)「特別チャペル」
投稿日:2024.06.03
聖書の箇所:新約聖書、ルカによる福音書10章25節~37節
奨励: 「わたしの歴史、あなたの歴史」
本日は特別チャペルとして、飛田雄一先生をお招きしました。飛田先生は生まれも育ちも神戸という生粋の神戸人です。神戸大学農学部を卒業し、神戸学生青年センターに就職。その後、同センターの理事長をお勤めになりました。ほかにも強制動員真相究明ネットワーク共同代表、NGO神戸外国人救援ネット代表、SCM協力委員会主事など、数多くの支援を目的とした団体の要職を歴任しています。
第二次大戦下、日本政府の「宗教団体法」により、当時日本全国にあった30余派のキリスト教の団体は合同を余儀なくされ、1941年6月に一つの合同教会となる日本基督教団が設立されました。戦時下においては、教団の代表が伊勢神宮に報告に行かねばならぬなど、国の政策に従わない団体には宗教弾圧と言える行為が行われていました。非戦・反戦を訴える牧師などのキリスト者は、その多くが戦犯として投獄されるなどの扱いを受けていました。
飛田先生の生まれ育った神戸には軍需工場も多く、とりわけ神戸港は軍港であり、空襲被害も多かったところです。戦争が激しくなるにつれ、連合軍の外国人捕虜や、中国人・朝鮮人の労働者の死者もかなりの数に上っています。飛田先生は、そうした外国人の戦没者などの実態調査を行い、母国にいる戦没者遺族に連絡をしたり、遺族を日本に招くなどの活動をなさっています。飛田先生はそうした調査や活動中を通して、戦時下だったとはいえ国や各種団体の対策には、矛盾点や思想のひずみがあったことを強く感じていました。それどころか現在においても、とりわけ外国人戦没者の中に、差別的な扱いが見られるなど、残念ながら日本の対応は無神経であり、極めて排外的であると言わざるを得ない、と語っています。
本日の聖書箇所は『善いサマリア人』の例えの話しでした。ここは、「隣人愛」を語る聖書箇所として有名です。追い剥ぎに襲われたユダヤ人を、ユダヤ祭司や祭司に仕えるレビ人など支配者階級の人たちは、見て見ぬふりをして通り過ぎてしまいます。たまたま通りかかったサマリア人だけが、気の毒に思い、親身になって救いの手を伸ばすという話しです。当時サマリア人はユダヤ人から蔑まれ、忌み嫌われていた人々でした。そのため一般的にユダヤ人とサマリア人の、お互いにたいする感情は決して良いものではありません。しかし、いかに普段憎み合っていたとしても、現在困難な状況にある相手を目の前にして、救いの手を伸ばすことこそが隣人愛なのだと聖書は語っているのだと思います。短期大学の学びは二年間です。しかし、卒業後に長い人生が待っています。卒業後に皆さんがどのように考え、どう行動するのかが重要なのだと思います。特別チャペルとして、示唆に富んだお話しでした。