【実施報告】10/14(火)「いのちのチャペル」
奨励者:NPO法人群馬DARC 代表 平山晶一 先生、施設長 福島ショーン先生
聖書箇所:『新約聖書、マタイによる福音書5章6節』 
10/14(火)チャペル・アワーには「群馬ダルク」さんから2名の方がお越しくださいました。昨年の11月にもお招きして【いのちのチャペル】として、お話を伺う機会を持ちました。ダルクとは、Drug (薬物)、Addiction(病的依存)、Rehabilitation(回復)、Center(施設)の頭文字DARCを組みあわせた造語です。薬物依存症や、これに類する問題で困っている方々が回復するための支援を実施している施設です。施設で働く方々のほとんどは、依存症患者として入所した方々です。薬物依存は体を壊すことはもちろん「心を蝕む病」でもあります。


平山さんは高校生時代に、ある市販薬を飲みはじめたことが依存性になるキッカケでした。友人に勧められるままに気軽に試しましたが、その時には強い依存は感じられませんでした。次の日は普通に生活も出来て「これなら、やめたくなったらやめれば良い」と、軽く考えてしまったのです。それよりも、一緒に飲まないことによって仲間を失うことの方が怖かったのだそうです。しかし、日を追って薬の量は増えて行ったのです。学業はおろそかになり、次第に現実の自分を直視するのが嫌になりました。そして、その状況から現実逃避をするために、なおさら薬に依存するようになってしまったのです。
購入費用をねん出するためにあちこちからお金を借りたり、盗んでしまったりなど犯罪に手を染めてしまいました。警察の世話になり、家族を悲しませることは充分に分かっています。そしてその時はやめようと決心するのですが、やめられなかったのです。精神的においつめられ自殺を考えたことも何度もあったそうです。
福島さんは米軍基地の住宅で幼少期を過ごしていました。基地内にある教会の牧師さんは厳格な方でしたが、日曜学校の終了後にいただくクッキーが楽しみで、毎週通っていたと話してくださいました。福島さんは体力があり、スポーツも得意でプロスポーツ選手になることを志していました。学習面でも米国の有名大学に進学するほどの、いわゆる優秀な生徒でした。一般に依存症とは『目標も無く生きている意志の弱い人』がなるものと勝手なイメージで語られることが多いです。しかし、福島さんはそうしたイメージとは全く結びつきません。
薬物を始めたキッカケは、競技力向上や疲労回復を目指したもので、スポーツ選手として前向きな考えであったと言えるかも知れません。しかし、結果的には薬物に依存してしまい犯罪に手を染め、懲役刑を受けるまでになってしまったのです。出所後には新たに出発しようと決心しても、自らに対する反省や葛藤など多くの複雑な感情が入交じり、自分でも気がつかないうちに薬物を使用してしまうことがあったのだそうです。
どちらの方も、そんな経験を経て「ダルク」の存在を知り入所したのです。ダルクには回復の辛さを知る先輩が多く、今後の向かう先を示して背中を押してくれたり、側面から支援をしてくれるなど、寄り添い共に歩んでくれる方々がいました。薬物依存になる人が全くいなければ、こうした施設はいりません。しかし、それは理想論です。薬物依存からの回復率は40%程度と言われています。しかも、依存症に悩む方々は、覚醒剤や大麻のような『麻薬』と呼ばれるものよりも、市販薬や病院処方の薬、お酒、が原因であることが多いのです。これは我々にとって極めて身近な問題なのです。しかも依存症は、薬物だけでなく、アルコール、好きな食べ物、ギャンブル、盗み、自傷行為など様々なものでも知られています。依存症はその行為を繰り返すことによって脳の状態が変化し、自分で自分の欲求を止めることが出来なくなってしまう病気なのです。依存症になるキッカケはどこにでもあり、誰もがそうなる可能性を持っています。しかも現在は、ネット環境等を利用して多くの情報が氾濫しているなど誘惑も多いです。さらに人間関係のしがらみで断りにくい状況になることも多く、依存症は自分の力だけでは克服することの出来ない病気なのです。
お二人は現在、ご自身の経験を生かして入所者と共同生活をしながら回復の支援をなさっています。近年、『薬物乱用防止教室』といった内容で、学校など多くの施設から講演を依頼されることが多いそうです。昨年度にいらした時には、図書館棟三階の旧礼拝室でのチャペルでした。今回は新木造校舎二階での実施となりました。お二人共が同様に「この場所は神聖な雰囲気があり、しかも学生さんと距離も近くて話をしにくいです」と語っておられたことが印象的でした。お話の対象はキリスト教主義の短期大学の学生です。ただ単に『危険だから』というだけでなく、『なぜ依存症になってしまうのか、なぜそこから抜け出しにくいのか』、ということを、より具体的、心情的に語ってくださいました。最後に経験者として『誘惑やしがらみとはあらがわずに、逃げてください。そして、怖がらずに誰かに相談することがとても重要です』 と語ってくださいました。今日のお話は、自らの失敗や犯した罪を神様の前で告白するもので、キリスト教的には『悔い改め』の行為そのものです。苦難を乗り越えた今、現在の歩みは多くの苦しみをかかえた人たちに寄り添うものとなっています。本日は貴重なお話をありがとうございました。
 
 
 
                 
         
         
        
 
                 
                 
                