news topics

2025年07月28日
チャペル

【実施報告】7/22(火)「チャペル・アワー」

奨励者:小栗仁志先生(新島学園中学校・高等学校 校長)

聖書:『新約聖書、マルコによる福音書11章27~33節』

 

本日のチャペル奨励者には、新島学園中学校・高等学校校長である小栗仁志先生をお招きしました。

本日の聖書箇所には、権威についての問答というタイトルがついています。エルサレムに入城し、神殿の境内を歩くイエスと、祭司長、律法学者、長老たち、当時の宗教指導者たちとの問答がなされる場面です。宗教指導者たちは「何の権威でこのようなことをするのか・・」とイエスに問答を仕掛けます。なんの資格があってそんなに偉そうに人々に教えるのかと問いただすのです。それに対してイエスは「ヨハネの洗礼は天からのものだったか、それとも人からのものだったか。答えなさい。」と、逆に問答で仕掛け返します。すると、宗教指導者たちは、答えることが出来ませんでした。宗教指導者たちは、洗礼者ヨハネは多くの人々から厚い信頼を得ていることを知っていました、そして、自分たちの返答次第では、群衆から強い非難を受けることが予想され、そうなることを恐れたためでした。宗教指導者たちは自分たちだけは安全圏にいてイエスを一方的に批判しようとしました。他者を批判するには自分自身の価値基準を持つ必要があり、それ自体も批判の対象となります。他者を批判することは自分自身も批判の対象となることです。イエスはその覚悟があなたにあるのかと問い返したのです。「私と同じ土俵にあがって来い」と、宗教指導者たちの当事者性を問題としました。

日本財団(地方自治体が主催するボートレースの売上金をもとに、国内外の社会課題解決に取り組むNPOの事業への資金助成をする民間団体)が、6か国(日英米中韓印)の若者を対象に、2年に1回意識調査を行っています。この調査結果を見ると、日本の若者は他国と比較して全体的に「自己肯定感が低く、自分は社会に対して無力である、世の中は変わらない」と考えていることがうかがえます。自分たちの手で社会を変えていく意欲が乏しいのです。社会の当事者性の欠如です。実はそうした傾向は私たちの年代から強くなっていったと言われています。私は現在59歳です。私たちが子どもの頃1960年代~70年代にかけてはいわゆる「高度経済成長期」と呼ばれ、日本社会は産業化と経済成長を共通の目標としていました。教育は良質な労働者を育てることを重視し「言われたことをいかに迅速に正確に実行できるか」が大切にされていました。私たちが頑張った受験勉強はそうした勉強でした。そんな私たちの世代には「自分が社会をよりよく変えていく」という発想はありませんでした。

これからの社会を作り上げようとする皆さんに、こんなことをいうのは大変情けないことであるし、非常に申し訳ないことです。私たちの世代は、現在、社会の中枢で働いています。しかし私たちは社会の大きな変化にしっかり対応できませんでした。高度経済成長期には考えられなかった社会の課題がたくさん生じてきたにも関わらず、その問題性をしっかり自分事として捉え、未来を見据えて対応策を打つことができなかったのです。その結果、環境問題もエネルギー問題も未解決の状態で皆さんの世代に引き渡そうとしています。その点では私たちの世代は失敗したのだと思っています。こんな私たちが皆さんに偉そうに「ああしろ、こうしろ」と説教することはできません。しかし、皆さんが私たちと同じことをしていては、これからの社会でより幸せに暮らすことは難しくなります。皆さんは現代社会を生きる当事者です。それだからこそ、よりよい社会、より幸せな居場所を作るために自分自身でしっかり考え、行動していって欲しいのです。学校教育も遅まきながらそのことに気がつき、変化しようとしています。今更ながら、私たちも変わろうとしています。皆さんもどうか変化に前向になって欲しいと思います。

バブル崩壊後の失われた30年などと言われて久しい現代日本、経済状況などなかなか明るい兆しが見えません。しかし、常に時代は変化をして行きますし、私たちはその変化の波に立ち向かっていかなければなりません。ご自身が社会の変化をしっかり見極めつつ、具体的な対策を熱く語る得難い奨励となりました。小栗先生どうもありがとうございました。

 

トップへ